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卵子提供家族の子供との偉大な絆ー遺伝子を超える「育てる」ことの科学的真実

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直前の記事で引用した論文について、その内容を詳しくご紹介します。( https://www.novaseed.co.jp/post/ranshi-teikyo-kizuna-kenkyu


スーザン・ゴロムボク教授による2013年研究の概要

•研究者: スーザン・ゴロムボク (Susan Golombok) 教授および研究チーム(英国ケンブリッジ大学)

•論文名: "Families created by egg donation: follow-up at age 12"(卵子提供によって形成された家族:12歳時点での追跡調査)

•学術誌: Child Development (2013)


「卵子提供を受けたら… 遺伝的に異なる子どもを、本当に自分の子として心から愛せるだろうか?」 「いつか、子どもとの間に『違い』という壁ができてしまったらどうしよう?」

卵子提供という選択を前に、多くのご夫婦が最初に抱えるのは、このような不安と恐れです。

しかし、もしこの不安が単なる杞憂に過ぎず、それどころか、卵子提供によって出会った親子が、自然妊娠の家族と同等、あるいはそれ以上に深く安定した絆を築いているという科学的な証拠があるとしたら、どうでしょうか?

この記事は、「遺伝か、それとも養育か?」という長年の問いに対し、数十年にわたる心理学・医学研究が導き出した明確な答えをお伝えするために書かれました。

その結論は、ただ一つです。

家族の絆は、遺伝子ではなく「共に過ごした時間」によって築かれる。


1. 12年にわたる証明:遺伝的なつながりは絆の条件ではなかった

(ゴロムボク教授研究チーム、2013年)

かつては、「遺伝的なつながりがない親は、子どもと深い絆を形成するのは難しい」という社会的な偏見が存在しました。

この通念を検証するため、英国ケンブリッジ大学のスーザン・ゴロムボク教授の研究チームは、12年以上にわたり卵子提供(egg donation)を通じて形成された家族を追跡する長期研究を実施しました。

彼らは、これらの家族を自然妊娠の家庭や養子縁組の家庭と比較することで、遺伝的なつながりがないことが、親子関係に本当に違いをもたらすのかを科学的に検証したのです。


Families created by egg donation: follow-up at age 12(卵子提供で形成された家族:12歳追跡研究)

その結果は、多くの人々の考えを覆すほど明確でした。


• 卵子提供家族と自然妊娠家族の間で、愛着や情緒的な絆の質に → 何ら有意な差は見られなかった。

• むしろ、卵子提供によって親となった家庭—特に母親—は → 子育てに対して、より高いレベルの温かさと情緒的な関与を示した。

つまり、「遺伝子が同じでなければ本物の愛情は生まれない」という考えは、科学的に検証された結果、事実ではないことが証明されたのです。


2. 切なる願いが育んだ深い愛情:なぜ、ある親はより大きな温かさを見せたのか?

研究チームは、この現象を「切なる願いの力」として説明しました。

長年にわたる不妊治療、繰り返された失敗、諦めかけた瞬間— その長い道のりの末に、ようやく授かった子どもだからこそ、親は子どもに対してより温かい関心と愛情を自然と注ぐようになります。

あなたがこれまで歩んできた道、そして今も諦めずに選択肢を広げようとしているその心こそが、すでにお子様へ届く最も大きな愛の証なのです。


3. 最新医学が解き明かす10ヶ月の奇跡:「エピジェネティクス(後成遺伝学)」という生物学的なつながり

「それでも… 遺伝的に違うのは事実でしょう?」

このような懸念を抱くのも、当然のことです。

しかし、現代医学は驚くべき事実を明らかにしました。卵子提供によって遺伝子が異なる胚が着床した場合でも、妊娠中の10ヶ月間、母親の体が胎児の遺伝子発現に直接影響を与えるということです。


Vilella et al. (2015). A molecular dialogue between the embryo and the endometrium

研究によると、以下のことが分かっています。


• 母親の子宮内膜液に含まれる分子が → 胚の遺伝子発現(gene expression)を調節する。

つまり、妊娠した瞬間から「遺伝子が100%他人のものである子ども」ではなく、母親の体が子どもに影響を伝える生物学的な関係がすでに形成されているのです。

これは単に「場所を貸すだけの妊娠」ではなく、子どもの生物学的な形成過程に参加する、真の母親としての妊娠を意味します。


4. 40年にわたる最終結論:家族の構造よりも大切な、たった一つのこと — 「関係の質」

ゴロムボク教授の研究は2013年で終わりませんでした。彼女は40年間の研究を基に、2020年に出版した著書『We Are Family』で最終的な結論を下しています。

「遺伝的なつながりの有無は、子どもの幸福や心理的発達にほとんど影響を与えない。」 「家族の真の核心要素は、関係の質である。」

子どもの情緒的な安定、幸福、社会性、自尊心など、すべての主要な発達指標は、親が子どもとどのような関係を維持するかによって決定されます。遺伝の有無がその中心になることはありませんでした。


最後に:絆は「共に過ごす時間」が作ります

「私は本当に、遺伝的なつながりなしに子どもを愛せるだろうか?」

この悩みを抱えているという事実そのものが、あなたが最も温かい親になる準備ができているという証拠です。

心理学の古典的な理論である愛着理論(Attachment Theory)も、同じことを語っています。

親子の絆は、遺伝子ではなく、


• 赤ちゃんが泣いたときに抱きしめる瞬間

• お腹が空いたときに与える手の温もり

• おむつを替えるという日々の世話

• 子どもと目を合わせながら過ごす時間


このすべての一貫した「世話の経験」の上で築かれていくのです。

あなたが歩んできた不妊治療の道のり、決して楽ではなかった時間、そして諦めずに親になるために踏み出している現在の一歩。

その切なる願いこそが、これからお子様と積み重ねていく数多くの「共に過ごす時間」を、最も温かく満たしていく力となるでしょう。

 

 

 


記事提供:ノバシード編集部

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