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日本の卵子提供とJISARTの役割:現状と未来への課題

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はじめに

近年、晩婚化や様々な医学的要因により、不妊に悩むカップルが増加しています。その中で「卵子提供」は、子どもを授かるための重要な選択肢の一つです。しかし、日本では卵子提供に関する法律が未整備のため、多くの混乱が生じているのが現状です。

このような状況において、日本の生殖補助医療(ART)の質と安全性を守るために中心的な役割を果たしているのが、JISART(日本生殖補助医療標準化機関)です。本記事では、JISARTがどのような組織で、卵子提供とどう関わっているのか、そして日本の不妊治療が直面する課題と今後の展望について解説します。



1. JISART(日本生殖補助医療標準化機関)とは?その設立の背景


JISARTは、2003年3月1日に設立された、日本の生殖補助医療における代表的な標準化機関です。 当時の日本では、不妊治療、特に体外受精(IVF)の分野で明確な法的規制がありませんでした。 そのため、安全で質の高い治療をいかに提供するか、そして患者さんの安全をどう守るかが、課題となっていました。 この課題を解決するため、国内の主要な生殖医療専門施設が集結し、ISO 9001に基づく品質管理システム(QMS)を導入しました。 これにより、標準化された質の高い診療体制を確立し、患者が安心して治療を受けられる環境を整えることを目的にJISARTは発足したのです。


2. 厳格な認証システムと組織構成


現在、JISARTには全国から約30の医療機関が加盟しています。 加盟を希望する施設は、約450項目にも及ぶ厳格な審査基準に基づく審査を通過しなければなりません。この審査は、医師、看護師、臨床検査技師、心理カウンセラー、さらには患者団体の代表者など、多角的な視点を持つ専門家チームによる実地調査を経て行われます。

この厳しい認証プロセスをクリアした医療機関は、日本国内で質の高いARTを提供する「標準診療機関」として広く認知されています。


3. JISARTと卵子提供の関係:法律に代わるガイドライン


日本には、第三者からの卵子提供を直接的に規定する法律がいまだ存在しません。 そのため、JISARTが定めるガイドラインが、事実上の業界標準として機能しています。

JISARTのガイドラインにおける主なポイントは以下の通りです。


  • 対象者: 早発卵巣不全や、複数回の体外受精でも妊娠に至らなかった場合など、医学的に卵子提供以外に妊娠の可能性が極めて低いと判断された夫婦が対象となります。

  • ドナーの条件: 原則として20歳以上35歳未満の健康な女性とされています。

  • 匿名性と出自を知る権利: ドナーの個人情報は保護されますが、生まれた子どもが15歳以上に達した際には、自身の出自に関する情報の開示を求める権利が認められています。

  • 無償の原則: 卵子提供は無償が原則であり、金銭的な報酬は禁止されています(交通費などの実費補填は可能)。

  • 倫理委員会の承認: 患者の希望だけで治療が進められることはなく、必ずJISARTの倫理委員会による厳格な審議と承認が必要です。

 

4. 日本における卵子提供の現実と課題


JISARTのガイドラインは日本の生殖医療の質を支える重要な柱ですが、国内での卵子提供は依然として多くの課題を抱えています。 特に、無償の原則ドナー不足、そして あまりにも厳格な倫理審査が大きな壁となり、国内で卵子提供が認められるケースは極めて限定的です。

その結果、多くの日本の夫婦が、アメリカ、タイ、台湾といった海外の卵子提供プログラムに活路を見出しているのが現実です。


5. NOVASEEDの願い:日本国内で安心して治療を受けられる未来へ


JISARTは、法律に代わって卵子提供を実質的に管理・監督し、患者が信頼できる医療機関を選ぶための重要な指標となっています。しかし、その厳格な基準とドナー不足という現実が、多くの夫婦を海外へと向かわせています。

このような状況だからこそ、私たちは願います。子どもを持つことを望む日本の夫婦が、憲法で保障された幸福追求権を尊重され、海外に頼ることなく、日本国内で安心して安全な卵子提供治療を受けられる環境が整うことを。

 


 

参考文献


卵子提供プログラムについてはこちらから👇


 
 
 

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