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「量より質へ」:たった一つの卵子の可能性を信じた、故 加藤修博士の革新

更新日:11月8日

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はじめに

不妊治療道のりは、時に多くの忍耐を要求します。頻繁な注射と薬物、身体的な負担、そして予期せぬ副作用への懸念は、患者様の心身を疲弊させることがあります。


1990年代、「より多くの卵子 = より高い成功率」という公式の下、高用量の過排卵誘発注射が主流だった時代がありました。しかし、この方法による患者様の苦痛を無視せず、「本当にこの方法しかないのだろうか?」という根本的な問いを投げかけた医師がいます。


今日のお話は、「患者親和的治療」という言葉を初めて世に知らしめた先駆者、故 加藤修 (Osamu Kato) 博士です。


「なぜ患者が苦痛を負うのか?」:高刺激IVFの主流に疑問を呈す

故 加藤修博士は「加藤レディスクリニック」の創設者です。当時、不妊治療は高用量のホルモン注射で卵巣を強く刺激し、一度に10個、20個の卵子を採取する「過排卵誘発方式」が標準でした。

しかし、この方式は患者様に過酷な代償を強いました。


  • 身体的苦痛: 毎日打たなければならない苦痛を伴う注射。

  • 副作用の危険: 腹水が溜まり、重症化すると入院が必要となる「卵巣過剰刺激症候群 (OHSS)」のリスク。

  • 精神的・経済的負担: 高額な薬物費用と頻繁な通院によるストレス。


もちろん、現在では医療技術の進歩により、注射の苦痛やOHSSのリスクは大幅に軽減されていますが、2000年代初頭までは、これらが深刻な問題点でした。

故 加藤修博士は、このような治療法が果たして患者様にとって最善なのか、深く苦悩しました。


哲学の転換:「量」から「質」へ。「たった一つの可能性」を引き出す力

故 加藤修博士の哲学の核心は、「量より質」への転換でした。彼は、人為的な薬物で無理に多数の卵子を育てるよりも、身体が自ら選んだ「たとえ一つであっても、質の高い卵子」こそが妊娠の鍵であると信じていました。

そして、その「たった一つの可能性」を最大限に引き出すことに尽力されたのです。

この哲学は、不妊治療のパラダイムを「量 (Quantity)」から「質 (Quality)」へ、そして「患者の安全性」へと転換させました。彼はこの信念に基づき、二つの革新的な治療法を開拓しました。


故 加藤修博士が確立した二つの革新的治療法

  1. 自然周期体外受精 (Natural Cycle IVF) 排卵誘発剤を一切使用せず、患者様自身の自然な排卵周期に合わせて育つ単一卵胞を採取する方式です。


    メリット: OHSSのリスクが全くなく、注射の苦痛がないため、精神的・経済的ストレスが著しく低減されます。


  2. 低刺激周期 (Minimal Stimulation IVF) 自然周期が難しい場合や、わずかな補助が必要な場合に、内服薬や少量の注射のみを使用し、刺激を「最小限」に抑える方式です。


    メリット: 副作用のリスクを大幅に軽減し、費用負担も少なくします。特に高用量の注射でも卵胞が育ちにくかった「低反応群」の患者様にとって、この低刺激周期は新たな希望の代替案となりました。


世界標準へ:懐疑的な視線を乗り越えた「培養技術」の勝利

もちろん、この方式が最初から歓迎されたわけではありません。「卵子たった一つで、どうやって成功率を保証するのか?」という学界の懐疑的な視線に対し、彼の答えは明確でした。

卵子が一つだからこそ、「その一つの大切な卵子を絶対に失うことなく、完璧に育て上げなければならない」と、クリニックの培養技術を世界最高水準に引き上げることに集中したのです。

結果は成功でした。加藤レディスクリニックは、卓越した培養技術を基盤に、低刺激周期でも高い成功率を立証しました。卵巣機能が低下した患者様やご高齢の患者様にも新たな道を開き、彼の方式は世界中の病院に「患者に負担をかけない」治療の重要性を強く認識させました。

現在、彼が開拓した「低刺激周期 (Minimal Stimulation)」は、世界中の不妊病院で使用される世界的な標準治療法の一つとして、堂々とその地位を確立しています。


彼の遺産:患者の心身を最優先する「患者親和的自然主義」

故 加藤修博士の哲学は、単なる「技術」を超越しています。それは、不妊で苦しむ患者様の身体的、精神的負担を第一に考え、生命の根源である女性の身体を最大限に尊重しようとした「患者親和的自然主義」です。


彼の物語は、「必ずしも一つの道だけがあるわけではない」こと、そして患者様の心身を最優先することが医学の最も重要な価値であることを、私たちに改めて気づかせてくれます。

NOVASEEDもこの患者中心の哲学に従い、患者様にとって最も良い方法で、最も負担の少ない方法で卵子提供プログラムを繋いでいく所存です。




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