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胚を1つだけ移植したのに、なぜ双子が生まれることがあるのでしょうか?

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「卵子提供プログラムで胚を1つ移植したのですが、双子になる可能性はありますか?」

この質問は、病院でのカウンセリング時によく聞かれる質問の一つです。安全を最優先とする日本の不妊治療では、一般的に単一胚移植(SET, Single Embryo Transfer)が推奨されています。しかし、たった一つの胚を移植したにもかかわらず、双子が生まれるケースがしばしばあります。

この記事では、その理由を科学的な原理とともに分かりやすく説明します。


1. 胚の発達:3日目胚 vs 5日目胚(胚盤胞)

まず、胚移植の時期について理解すると良いでしょう。胚は移植の時期によって大きく二つの段階に分けられます。

• 3日目胚(分割期胚): 受精後3日目で、細胞が約6~8個に分裂した状態です。

• 5日目胚(胚盤胞, Blastocyst): 受精後5日目で、細胞が数百個にまで発達し、着床能力がより高まった状態です。

最近では、妊娠成功率を高めるために、染色体異数性スクリーニング(PGT-A)の有無にかかわらず、着床能力がより優れた5日目胚(胚盤胞)移植がより頻繁に選択される傾向にあります。


2. 双子が生まれる二つの理由

双子は大きく「二卵性」と「一卵性」に分けられます。

• 二卵性双生児(Fraternal Twins) これは最も一般的に考えられるケースで、2つの胚を同時に移植(二重胚移植, DET)した際に、それぞれの胚が両方とも着床に成功する場合です。この双子は遺伝的に一般的な兄弟姉妹と同じです。

• 一卵性双生児(Identical Twins) - 単一胚移植の核心 これが、胚を1つだけ移植したのに双子が生まれる理由です。移植されたたった一つの胚が、発達の過程で自然に完全に二つに分かれ、それぞれが独立した個体として成長する現象です。一つの種を蒔いたのに、その種から二つの芽が育つようなものです。この場合、二人の赤ちゃんは遺伝情報が100%同一です。稀なケースではありますが、一卵性三つ子も非常に低い確率で可能性はあります。


3. なぜ体外受精(IVF)では一卵性双生児がより多く生まれるのか?

いくつかの研究結果によると、自然妊娠よりも体外受精(IVF)において一卵性双生児が発生する確率が統計的にわずかに高いとされています。正確な原因はまだ研究中ですが、専門家は以下の要因が影響を与える可能性があると考えています。

• 胚盤胞培養: 胚を5日以上体外で培養する環境が、胚の分裂可能性に影響を与えるという仮説です。

•アシステッドハッチング/生検: 着床を助けるため、またはPGT-A検査のために胚の透明帯(殻)に微細な刺激を与える過程が、胚分裂の確率を高める可能性があるという仮説です。


最終まとめ

結論として、胚を1つだけ移植した場合でも、その胚が自ら分裂して一卵性双生児が生まれることがあります。これは、施術の問題ではなく、自然で神秘的な生命現象の一部です。稀なケースではありますが、十分に起こりうることですので、移植後の結果を待つすべての方々にとって良い情報となることを願っています。


関連論文

内容: 7つのIVFセンターで4年間分析した結果、単一胚移植(SET)後の一卵性双生児発生率は約0.37%で、自然妊娠よりもわずかに高く現れました。


2.Kanter J.R. et al. (2015) – 培養期間の効果 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4515956/?utm_source=chatgpt.com 

内容: Day 5–6の胚盤胞移植時、Day 2–3移植よりも一卵性双生児の割合が高い傾向が報告されました。

 
 
 

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